キンクス 「You Really Got Me」

この歌の言葉は陳腐だが、呪術的な繰り返しと、サウンドは今も心に響く

(2012年06月25日更新)

  • レイ・デイヴィスはまるで酒にも酔っているかのような、しかし相貌はしっかりと自分が作るべき音楽を見据えていた。 彼らの音楽は芸術性を帯び、イギリスという国をじっくりと観察した上に、音楽を創造していった。 そのキンキー(ひねくれた)な姿勢に、多くの後世のロックを志す者に影響を与える。 デイヴィス兄弟はロンドン北部郊外のイースト・フィンチリーに生まれる。 家族は6人の姉を持つ一番下の男の子として生を受ける。 家族の影響もあり、シカゴの黒人街の音楽であるR&Bに魅せられていった二人は、それぞれにバンドを持って音楽活動を始める。 やがて、二人の兄弟はお互いの音楽をすり寄せ、合流し、ジャズ系のクラブで演奏するようになる。 彼らの演奏を推薦したのはブルース界の重鎮、アレクシス・コーナーで、その演奏をきかっけにパイ・レコードと契約するに至る。 順調にバンドとしての成功の道を歩んでいたかに見えたが、彼らの最初のシングルでリトル・リチャードのカバーだった「のっぽのサリー」(ビートルズもカバーした)は不発に終わる。 その後の2枚目のシングル「ユー・スティル・ウォント・ミー」もあえなくチャート落ちすると、パイは3枚目のレコードが失敗したら契約を打ち切ると脅かしたという。 そんな中「ユー・リアリー・ガット・ミー」はリリースされる。 キンクスはこの曲を引っさげて、イギリスの人気番組「レディー・ステディー・ゴー」に出演する。 彼らのいでたちは赤いハンチング・ジャケットにフリルのシャツというもので、それはイギリスを象徴する貴族のようで、その貴族が与太者のような歌を唄う。 デイブのギターのディストーションサウンド(歪みのある音)は、その後のロックの形にも影響を与え、その演奏スタイルに、或者はヘヴィーメタルの起源と言い、あるものはパンクロックの先鋒だと言う。 「GとFとB♭。この三つのコードが僕の命」と後にレイが語ったことがある。 そのサウンドはシンプルで、且つバックで唄うデイブの繰り返す歌詞。 荒削りなビートで、フラット気味の歌声は、当時のロックサウンドには無い新鮮さがあり、また彼らの曲のわかりやすさと、格好よさに、キンクスは全英で1位に輝き、アメリカでもトップ10に入ることになる。 イギリスで最もガッツのあるバンドとしての地位を得たキンクスは、その後そのサウンドを残しつつ、社会を皮肉った歌を歌い、イギリス人の市井の物語を歌い、キンクスの曲は物語性を帯びていく。 そしてコンセプトアルバムとして有名な「アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡」を発表する。 その物語は「アーサー・モーガン」と言う架空の労働階級の人物を通してイギリスが語られる。 その後いくつかの分裂・脱退を繰り返しながら、30年余の年月を、兄弟のバンドとして続けていく。 特に後世のロックバンドへの影響は少なくなく、ヴァン・ヘイレンによる「ユー・リアリー・ガット・ミー」は有名なところである。彼らも兄弟のバンドである。 レイは叫ぶ。 You got me so I don't know where I'm goin', yeah 俺は君のものだが俺はどこへ行けばいいのか分からない Oh yeah, you really got me now そうさ、君は俺をモノにしたのさ You got me so I can't sleep at night 俺は君のものだが俺は眠れやしない You really got me 君は本当に俺を手に入れたのさ You really got me You really got me 言葉は陳腐だが、呪術的な繰り返しと、サウンドは今も心に響く。 格好良さとは、理屈では無い。
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