セイフ ヘイヴン

監督 ラッセ・ハルストレム
出演 ジョシュ・デュアメル ジュリアン・ハフ
制作 2013年アメリカ

チープな少女漫画のようだが、この物語の中には、二つの不幸な運命が横たわっている

(2014年11月17日更新)

  • 最近テレビで、男が釣った魚から、妻が湖で落とした指輪が見つかる、という話を見た。 ものすごい偶然だなあと思ったが、よくよく考えてみれば溜池程度の規模の湖ならばありえない話ではない。 海で釣ったものならものすごい確率だとは思うが、確率で行けば偶然ではなくて、何か必然のようなものを感じなくはない話である。 しかし、指輪を持っていた当人にとっては、そもそも無くした指輪が返ってきた、という偶然において、その指輪の存在が何か特別なものと考えてしまうのは、わからない心情ではない。 指輪が返ってきたのは、自分の人生にとって何か意味があるのではないか? そう考えることで、愛は深まるだろうし、何より愛が軽くなった時代においてとてもピュアで美しい話なので、疑わずにそっとしておきたいなあとは思う。 意味のある偶然が起きた場合に、その偶然が本当に偶然ではないのではないか? 一件無秩序に感じることが、ひとつの連続性のある物として捉えて行動した結果、次の現実的な物事と結びついていく。 この考え自体はスイスの心理学者の、超ビッグネームのユングが提唱した説で、シンクロニシティという言葉で定着している。 日本語では共時性とも言うらしく、僕は昔スティングが所属していたバンド、ポリスのアルバムでこの言葉を知った。 シンクロニシティはオカルトと結び付けて聞かれる言葉でもある。 例えばアメリカ大統領の二代暗殺事件と呼ばれるリンカーンとケネディは、議会選出の年と大統領就任の年がいずれもぴったり100年違いらしく、他にも暗殺者の年齢まで100年違いというトンデモなシンクロ率だそうだ。 よく考えればその間に多くの大統領の暗殺事件があり、何故リンカーンとケネディをフューチャーしたのか、いささかこじつけの気がしないでもないのだが、一方でこういったシンクロを経験することがある。 人によってはそれをルーティーンにすることで、自らの生活に共時性を生み出したり、いわゆるゲン担ぎのような意味合いで生活に取り入れるケースもあるように思う。 こういう話を信じてしまうのは、どこかで運や運命と呼ばれる根拠のないものを人は信じ、畏れているのかもしれない。 現実社会の中でシンクロニシティを考えるとき、僕たちはもっと、この言葉を元に良い行いをすることを考えるべきではないかと思うわけである。 自分の話で大変恐縮なのだが、競馬で大勝した日にポストを見たら、ユニセフからの募金のお願いが入っていた事があった。 これも考えれば毎年同じ時期にお知らせが来ていたのだが、そんなに注意をしていなかったこともあって、一瞬何で僕があぶく銭を稼いだことをユニセフは知ってるのだろうと思ってしまった。 同時にこんな金は普段何もいいことをしない僕にたまにはいいことをせよとの啓示かも、と思い、無神論者の癖にお金を寄付したことがある。 全く関連性のない競馬とユニセフ募金だが、まあ、おかげで心は少し清らかになったので、シンクロニシティの使い方としては、世界に少し貢献できたので良いのかもしれないなあ、と自己満足をしている。 という前置きを乗せて映画の話に戻るが、今回の映画は「セイフ・ヘイブン」である。 監督は「サイダーハウス・ルール」のラッセ・ハルストレムで、映画の題材はシンクロニシティである。 主人公の女性は、過去から逃れるため、変装を施し、住み慣れた街を出る。 そしてある直感を元にある港町に降り立ち、そこで生活を始める。 その直感は、彼女に一人の男性を引き合わせ、なんやかやで恋をする。 そして彼女の過去が精算され、男の死んだ妻への愛情や、家族への思いも引き継がれ、ハッピーエンドで物語は終わる。 書いていると、チープな少女漫画のようだが、この物語の中には、二つの不幸な運命が横たわっている。 その不幸な運命から幸せな運命を引き寄せたものが、女性のやさしさと、男性の家族への愛情である。 「サイダーハウスルール」や「ショコラ」「ギルバート・グレイブ」など全てにあるのだが、ラッセ・ハルストレム監督の映画の人物は、強い思いのようなものをもっていて、その思いが、映画を観る人の心を大きく揺さぶる。 男女の関係には、シンクロニシティという大仰な言葉以前に、惹かれあう偶然性があるのかもしれない。 あの時彼女がああいう仕草をしなければ、恋をしなかった。 あの時僕が病気にならなかったら、違う人と結婚していたかもしれない。 もっと素敵な、本仮屋ユイカさんみたいな女性と結婚していたかもしれない。 恋に偶然性はつきものである。 しょうもないことを考えてもキリがないので、今の現実をみていきましょう。
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