13人の刺客

監督 三池崇史
出演 役所広司 山田孝之
制作 2010年日本

日本人は奇数を好んだのかもしれないなあと思う

(2012年01月01日更新)

  • 13日の金曜日という映画がある。 この映画を知らない人もいるかもしれないので簡単に説明すると、お面をかぶった不死身の男(女性の場合もある)が、湖のほとりとかで、若者を中心に無差別に殺害をしていく全11作(平成23年現在)のホラー映画である。 この映画のヒットで世に浸透した言葉をあえて二つ上げるとすると、「連続殺人」と「不吉な数字13」であろう。 正直どちらもろくでもない。 「連続殺人」は後に映画「羊たちの沈黙」や、人殺しがいっぱい出てくる「FBI心理分析官」などのヒットにつながっていくことになる。 人間の影の部分に脚光を浴びせ、世に負の物語を知らしめた意味で、この映画のヒットは、映画というジャンルがなんでもアリになっていくきっかけとなった、一つの転機だったような気がする。 ホラー映画の事情には疎いのだが、この映画のヒットを境に、スプラッター系の映画が、無邪気に作られたように記憶している。 僕は今でもただただ人間が死ぬだけの映画に対しては相当の拒否感がある。 怖いし、キモイし、なにより救いがない。 なんでこんなものを好き好んで見る人がいるんだろうと思うのだが、そんな人から言わせると、恋愛ものを見てホワンとなる女の子を見て、どこにホワンとくるんだ、そもそもホワンって何だという事になりかねないので、そこは思うだけにしておくのだが、未だに「連続殺人」や「快楽殺人」という言葉には抵抗もあるし、それを戦争映画以外で見せられても、海の向こうの軍事練習のように、我が身の危険として捉えることができない。 要は、ホラー映画の楽しみ方がさっぱりわからないのである。 もう一つの「13」と言う数字は、もともと西洋では忌み数と呼ばれ、倦厭される数字のようだ。 諸説あるらしいが、一般的に13が忌み嫌われる数字として認識されるようになったのは、キリスト教で裏切り者のユダが、最後の晩餐で13番目の席に座っていたため、というのがどうも有力な気がする。 しかし、これも「ユダ」は12人目の弟子であることが聖書に書いてあり、そもそも使徒は12使徒と言うくらいで、全部で12人なので、ユダが13番目の席に座っていたというのはいささかこじつけっぽくはある。 いずれにしても13と言う響きは、現在では恐怖の数字のようにイメージされ、実際ホテルでも13のつく部屋は無かったり、実際は全てがそうではないのだが、死刑台の階段が13階段であるなど、まあ言葉のイメージによる浸透度はなかなかのものである。 実際、泊まったホテルが13号室だったら、クリスチャンでもないくせに何か嫌な気がする。 ある定説に対し、その定説が単純でイメージしやすものほど信用しやすいということで、「暗いところで本を読むと目が悪くなる」的な、根拠はよくわからなくてもその尤もらしさで信じてしまうのかもしれない。 13人の刺客と映画のタイトルを聞いたときは、咄嗟に映画の内容がコワイ話しではないかと思った。 内容は一部ホラーっぽいシーンもあるにはあったが、時代劇の醍醐味とも言うべき斬り合いの連続で、または敵を罠にはめるまでのスリル感があるという意味では、ジャンルは当然ホラーではなく、時代劇アクションであった。 特に、刺客となる13人のひとりひとりの個性がちゃんと描かれ、敵の悪さも相まって、なかなか勧善懲悪な映画ではあった。 もとは1960年代に作られた同タイトル映画のリメイク版だと言うことだったが、昭和っぽさは、かなりの腕前の松方弘樹さんの殺陣くらいで、全般新しい感性で描かれている感じはした。 見終わるとこの映画のタイトルがしっくりと来て、ああ映画らしい映画だったなあと満足することができた。 この映画のタイトルが「12人の刺客」でも同じ感想だったのかもしれないが、比較すると13の方が何かいい。 改めて考えてみると、何となくではあるが偶数はもっちゃりして、奇数はシャープな感じがするので、日本人は奇数を好んだのかもしれないなあと思う。 考えてみれば、日本人は昔から奇数を縁起の良い数字と捉えていた節がうかがわれ、七五三や七夕、端午の節句など子供の行事は奇数にまつわるものが多い。 戦隊もののヒーローの数も「ゴレンジャー」に代表されるよう5人だし、「七人の侍」「隠し砦の三悪人」など、奇数は小気味よい数字として、映画のタイトルに使われることも多い。年末の風物詩「忠臣蔵」も四十七士である。 この映画もなにかしらその奇数の持つ力強さに惹かれてのタイトルだったと考えるのは考えすぎだろうか? どうでもよいトリビアだが、最近見たテレビで、ジェイソンはチェーンソーで人を殺したことがないことを教わった。 いかにもと思う組み合わせなので、イメージしやすかったのだが、記憶とは本当に曖昧なもんだなあと思った。
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