里見八犬伝

監督 深作欣二
出演 薬師丸ひろ子 真田広之
制作 1983年 日本

馬琴は「中2病」だったのかもしれない

(2015年02月10日更新)

  • 先日、本屋さんでぶらぶらしていたら、エドワード・ゴーリーの「不幸な子ども」を見つけた。 始めて見た物珍しさから何気にめくってみたが、噂に違わず不幸な子どもの話で、こんな童話子どもに見せて良いのかしらん、と思った。
    知らない人のために書くと、この人の童話は何でこんなに暗いの?と思ううくらい話がひどくて、お金持ちの女の子がさらわれて、精神の病んだ人に売られて、最後は失明して馬車にひかれるという、もうとんでもない話なのだが、何もこんなことを活字にせんでも、と思ってしまう。 この本屋はわざとなのか、その周囲にはドグラマグラや少女地獄の夢野久作や、谷崎潤一郎何かが置かれていて、奇書の類を集めているかのような配置だったので、どうやらそういった客層のゾーンに入ってしまったようだと、その場を出たのだが、それにしても、こういった奇書の類は意外と息が長いものだと妙な関心をしてしまった。 この本屋では他に、スペクテイターの本も何冊かあったのでつい買って帰ったのだが、女の子がドアノブを舐めている表紙の写真集なんかもあって、ええっと思いつつも恥ずかしながら中を見てしまった。 見てみたら本当に若い女の子がドアノブを舐めているというだけの写真集だったのだが、その非日常感と、ドアノブと言う普段見慣れたアイテムに対し、エロティシズムを放り込んできたその感性に対し、日本のサブカルチャーもまだまだ大丈夫だなあ、なんて感想を抱きつつ店を後にした。 日本の文化も飽和状態だとよく言われているが、なかなかどうして逞しいのは、タブーなく切り込んでいく姿勢にあるように思う。 顕著には漫画の世界に見られるのではないだろうか。 あらゆるジャンルが網羅されていて、もう出尽くしているのではないかと思いつつも、毎度毎度新しいアイデアが出てくることに対し、昔日本は文化的後進国だなどと言っていた評論家がいたが、なかなかどうしてと言い返したい。 特に日本のクリエイティブ性は、サブカルチャーの世界で発揮され、本来日陰にあるべき考えを巧みに表の舞台に表現させる凄さにある。 ここからは持論なので、わかる人だけで良いのだが、例えばアニメの世界では胸が大きいが幼い表情の女の子がよく登場する。 これは性の対象として本来見ることのない、幼い女の子に対し、母性の象徴を組み込むことで、恐るべきフェチシズムを具現化している。 現実にそのような女の子はいないのだが、日本人の感性として、アンバランス感を礼讃する部分があって、例えば軍隊を持つことを強く反対する人が多いにもかかわらず、一方で少年を戦争の現場に向かわせるエヴァンゲリオンやガンダム何かが流行ったりする。 恋人を持たない若者が増えているのに、アダルト産業は活性化していたり、表裏が拮抗しているように思う。 おそらく日本人自体が二面性を持った民族で、ストレートな表現を好む海外の人になかなか理解されなかったのだが、サブカルの世界が親和性が高く花開いたのではないだろうか?と思うわけである。 という、日本人のサブカル論の前置きが正しいかよくわからないが、今回は「里見八犬伝」である。 原作は江戸時代の滝沢馬琴という博物学者のような人によって書かれた、全98巻106冊の大作である。 刊行開始は文化11年(1814年)だそうで、28年をかけてようやく完結する、言わば馬琴先生のライフワークのような作品である。 物語自体相当な博識に基づいて書かれていて、特に中国の水滸伝や封神演義などに影響を受けたと言われ、八犬士自体のモデルも、実在の戦国時代の武将に使えた「尼子十勇士」が見本になっているとされている。 こういった背景からか、物語はなかなかファンタジーに満ちている。 現代風に言えば、馬琴は「中2病」だったのかもしれない。 しかし、江戸時代にこのような物語を書くということを考えれば、ものすごい想像力だなあと、関心してしまう。 最近思い立って東映が作成した「里見八犬伝」をTSUTAYAで借りて観てみたのだが、古い映画なので映像のチェチさは仕方がないのだが、映画運びやストーリーは、なかなかに見ごたえがある。 正直2時間で収まる内容では無いのだが、コンパクトにしつらえており、退屈はしなかった。 原作を読んでいないので詳しいことはわからないが、登場する八犬士の概ねはキャラ設定もしっかりあって、なるほど物語が長くなるのもうなずける。 この物語こそ、深遠な物語背景や執拗なキャラ設定、及びその刊行数の多さから、オタクカルチャーの走りではないかと考える。 江戸時代という、背景も違えば、人の考えも今と異なる時代においても、里見八犬伝はサブカルチャーとして、江戸時代の庶民に受け入れられたのではないかと思うわけである。 案外、日本人の根底は、過去も昔もそんなに変わりがないのかもしれない。 P.S 若かりし真田広之さんのアクションはなかなか見ものです。 昔は体を張ったものも多くあったなあ、CG全盛の今にない、体当たり感に懐かしさを感じてしまいました。 アクションの中で使われるピアノ線の処理忘れなんかもあって、その荒さもまた味で良いものです。
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