ヒューゴの不思議な発明

監督 マーティン・スコセッシ
出演 エイサ・バターフィールド クロエ・グレース・モレッツ ベン・キングズレー
制作 2011年アメリカ

夢を見ることができる人間の素晴らしさを称える映画

(2012年09月25日更新)

  • 寺沢武一先生の代表的な漫画「コブラ」の中で、美しい3姉妹の背中に地図が施され、姉妹が集まるとその地図が浮き上がり、お宝の眠る場所を表すというようなものがあった。 なかなか捻った内容なのだが、物語展開の根本はスチーブンソンの宝島であり、幾人もの作家たちによって手垢が付いたストーリーではある。 そんなことをひねた頭で思うのだが、手垢が付いているとは言え、この手の話には決まって心のどこかにワクワク感が湧いてきて、そこから始まる冒険譚に興味が惹かれてしまうのは、やはり自分が男だからだろうか、と思う。 世の中には、この手の冒険譚でヒットしたケースが多くあり、ハードジャンパー(こよなく少年ジャンプを愛する者) の僕も大好物の漫画「ワンピース」も、海賊になるきっかけは「ひとつなぎの秘宝」探しである。 古い映画だと「グーニーズ」などと言う財宝探しの映画もあったし、「スタンド・バイ・ミー」も大義を取れば、宝物探し的フラグが立って、それを探しに行く映画と言える。 手法は手垢がついていても、人間の根源的な欲求である未知なるものへの探求心を描く話は、世の中の男(の子)たちは、心の琴線に触れられたように、理屈なく好きになってしまうのかもしれない。 話は少し変わるが、僕は趣味でスキーをやるのだが、毎年スキーに行くと、リフト下の新雪なんかを、あれほど入るなと書いてあるのに、柵を越えてよたよた滑っているスノーボーダーを見かける。 あれも一種の冒険心なのか、チャレンジャーは必ずどこにでもいる。 僕自身も40を迎える年になってきたので、あまり無茶はしたくないなあと思いつつも、ボーダーがやっているジャンプ台にスキー板で入って、頑張ってトリックに挑戦したりすると、得も言えぬワクワク感で一杯になって、テンションが上がってくる。 大抵一人でスキーに行くので、コケてもただハズいだけなのだが、高揚感に負けて全力で飛んで足を捻ってしまい、ブルーになりながら踝をジンジンさせて家路についたこともある。 40前のおっさんでもこんな気持ちになるのだから、子どもは言わずもがなである。 考えてみると、太古の遺跡を掘り起こしているのは大抵男性だし、ヨットで世界一周だの、ヒッチハイクで世界一周だのをやるのは大抵男である。 女性の場合、「一人では治安の悪い所には危ない目に会いやすいので行けない」ということもあるのだろうが、それでもチャレンジ精神がどぎついのは、男性が圧倒的に多い気はする。 その理由として、男は太古の時代は狩猟民なので、DNA的に新しい所に出ていくことに高揚感を覚える、ということはあるのかもしれないが、個人的には男が女よりもロマンチックだからではないかと思う時がある。 男が無謀な冒険に高揚するのは、心のどこかに、「海王類のような大きな魚がいる海」があると思ってヨットで海に出たり、「いつかはスキーで里谷多英ばりのバックフリップができる自分」があってよたよたとジャンプ台に登る自分がいて、そんな夢を抱いて新しい場所に一歩を踏み出そうとしているのだ、というとちょっと格好つけすぎだろうか。 つまりは、リスキーな賭けに自分を晒すことで、逆にエクスタシーにも似た快感を感じているのかもしれない。 心のどこかで、世の中は普通では終わらないと思いたいのかもしれない。 映画「ヒューゴの不思議な発明」は、宝の地図が「父が残したからくり人形」で、冒険のフラグが立つのは、知り合った駅の物売りの娘の持つ小さな鍵である。 鍵と少年の父への思いとが重なり、人形が動く時、少年は宝の正体を知る。 同時にこの物語の中で描かれるものは「映画」である。 メリエスの「月世界旅行」のような初期映画創世記の作品がいくつか登場し、映画作りの楽しさや、映画が作り出す夢の深さを新ためて感じることができる。 何事もそうなのかもしれないが、はじめてやることには夢があってロマンがある。 だから人ははじめてのものに心惹かれるし、それ自体慣れてしまっても、イメージを持てばまた新しい夢を想像することができる。 映画創世記は、正に新しく創造していく冒険の連続だったのである。 この映画は夢を見ることができる人間の素晴らしさを称える映画である。 僕はもうすっかりおっさんで、夢や冒険を忘れかけているが、時には新しい何かにぶつかって行くのも必要ではないかと思った。 それが自らを枯れさせない、一つの方法ではないだろうか? 無論怪我をしない程度にではあるが。
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