きっと、うまくいく

監督 ラージクマール・ヒラニ
出演 アーミル・カーン カリーナー・カプール
制作 2009年インド

その追求心がひとつの結実した形にならんことを思い描きながら

(2014年11月03日更新)

  • 入学した高校の生徒集会なんかで、学校から制服を撤廃させる運動があった。 その恩恵か、僕は入学してすぐに、学生服による規制が比較的ゆるくなって、何だか嬉しかったのを覚えている。 当時はまだ学生運動みたいなものがあって、学校の風紀や体制に生徒が口を出す、みたいな動きがあった。 最近でもジブリ映画で「コクリコ坂から」みたいな映画でも描かれてはいたが、学生は自由があって良い。 サラリーマンになってそろそろ20年になろうか、という僕は、もうすっかり疲れ果てて、しょうもない決め事に文句を言う体力もなくなってしまった。 僕はこの年になって思うのだが、年を重ねて厚みを成さないおっさんと、反発しない若者にはうんざりするなあと思う。 若い時に波風立てずに生きてきて、今の齢で厚みも無いのを棚に上げて言うのだが、それでも若さ故の反骨と年を重ねた重厚感は無いよりはあった方が良いように思う。 僕はある人の教えで、若い時には何事も疑ってかかるというようなことをやっていた。 何か情報を得ても、それホンマか?というスタンスでいたため、そのあと調べるのが大変で、でも実際に調べてみると、あれ?ちょっと違うなあ、という情報が世の中には溢れている。 そういうことが分かり始めると、自分自身が情報というものに距離を置くようになり、その情報を確かめるために他の情報を取得するというようなことができるようになる。 若い頃の僕は先生や仕事先の上司の意見をそのまま聞くという社員ではなかったので、学力や営業数字はいいけど好かれない人間だったように思う。 でも結局、そういうことを繰り返したから、今の自分は人よりも少し多くのことができるようになっているし、多分人よりもトライする気持ちが強いのではないかと思うことがある。 よくある若い人への苦言みたいで好きではないのだが、何もかもを否定したり、反発しなさいとは言わないが、疑問を持って欲しいなあとは思う。 ひょんなことから僕の後輩がこのサイトを見つけるとハズいのでこれ以上は書かないが、反発から何かが生まれるのは科学でも証明されている事なので、若い頃は恐れずに物事を言って欲しいなあと思う。 同時に、それを受け入れるだけの度量も、年配者には持って欲しい。 かつての自分がそうであったように、疑うことから人は多くの知識や知恵を得てくるので、頭ごなしに「ダメだ!」などとやるのではなく、まずは聞いてあげて欲しいなあ、と思うわけである。 久しぶりにインド映画を観た。 しかも多分初めて見る青春学園もので、インド社会も随分と変わったなあと思う映画だった。 昔見たインド映画は、とにかくカット割りが昔の香港映画みたいにチャカチャカしていて、とにかく踊る場面が多かった。 映画自体も長い(長く感じる)ものが多く、冗長なイメージがあって、正直好きではなかった。 しかし、今回ご紹介する「きっと、うまくいく」は、イギリスあたりのコメディかと錯覚するくらい、洗練されている。 インド映画が野暮ったいと言いたいわけではないが、今までとイメージが異なる映画だった。 内容はインドでも有数のエンジニアを排出する大学で、3人の青年が巻き起こすドタバタなのだが、とりわけ愛と友情と青春が十二分に散りばめられている映画だった。 昔の日本映画でもこういう感じのがあったなあ、とノスタルジーを感じるが、インド特有の事情も見られる。 例えば特権階級のバカ息子の替え玉で学士課程を取得したり、貧しいインドでエンジニアになるということの親たちの期待度の高さなど、特有の社会背景も感じられて楽しい。 嵐で校舎が停電になってしまった夜に、恋人の姉の出産を断行するシーンなんかは、なかなか個性的な設定を感じることができる。 主人公の一人の青年が言う。 「学ぶ気があれば勉強はどこでもできる」 その言葉通り、彼はルールや規定に縛られない学問を追求し、最後は偉大な科学者になる。 若者が持つ特権とも言える反発を繰り返しながら、でも自身は大きなインドの階級社会の中で、他人の学士取得のために大学に通わなければならない。 自由な学問を求めながら、閉じられた大学の中で自身の学びを追求していく。 その結果、社会に出て彼は成功を収めるが、同時に貧しい者へ目を向けることも忘れずに、山奥の小学校の教師として生きていこうとする。 疑うことから、自らが学ぶことを覚えていく。 反発することから、大きな力を身につけていく。 やがて、その追求心がひとつの結実した形にならんことを思い描きながら。 僕は映画を観ながら、そんな彼の姿が羨ましかった。 なるべく若い人に観て欲しいなあ、と思う映画でした。
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