ゴールド/金塊の行方

監督 スティーヴン・ギャガン
出演 マシュー・マコノヒー エドガー・ラミレス
制作 2016年 アメリカ

日本はかつて世界有数の金の産出国だった

(2018年04月12日更新)

  • 現代に生きているとあまりピンとこないのかもしれないが、日本はかつて世界有数の金の産出国だったことがあるのをご存じだろうか。 歴史に詳しい方ならご存知かもしれないが、イタリアの冒険家マルコ・ポーロがその著書、東方見聞録で「黄金の国ジパング」と紹介されたこともあり、当時のヨーロッパでは日本は憧れの金が溢れる国だったようだ。 とは言えさすがに800年も前なのでその真偽は首をかしげたくなるのだが、マルコポーロが生きた13世紀末は日本では鎌倉後期ということになり、すでに金の採掘がおこなわれていたのも史実のようで、当時の産出国は岩手県で、大ケ生金山や玉山金山といった金山があったらしい。 ひょっとしたら奥州藤原氏が栄えたのも、この金のおかげだったのかもしれない。 13世紀の中世に書かれた書物に信ぴょう性があるかと問われれば、マルコポーロ自体は現在の定説では日本に来たことがなく、伝聞で東方見聞録を書いたようで、例えば「日本は黄金の豊富な国なので、皇帝の宮殿は屋根も床もすべて黄金でできている」という記載や、「赤い真珠などの財宝があった」などという記載もあり、根拠はわからないが、日本がいかに財宝の多い国なのかが紹介されているそうだ。 確かに中尊寺金色堂や少し後だが金閣寺や、大阪城の茶室など、兎角に権力者の建物には金が登場する。 仏教世界を描く上でも金は極楽を表す色合いとしては貴重だし、権力者の象徴としても金はその顕示欲を満たしてくれるものであることは、間違いのないことのようだ。 ただ東方見聞録は内容の真偽は定かではなく、別の章では日本では人肉を食べる風習があるかのごとく書かれているということで、さすがに日本の歴史上にまれにそういう人はいたのかもしれないが、風習となると首をかしげたくなってしまう。 マルコポーロの伝えた日本は、当時の人々にどのようなインパクトを与えたのだろう。 そもそもヨーロッパの人々からすれば、四方を海に挟まれた単一民族の国は、世界でも相当稀有な存在だったはずなので、神の国にも似た神秘性を誰しもが感じていたのかもしれない。 ドラクエとかでもたいてい大ボスのいる場所は孤立した島だったりするので、陸につながっていないという事が、人々の想像をたくましくするのかもしれない。 きっとここではないどこかに、素晴らしい何かがあるに違いないという思いは、今も昔も変わらないのかもしれない。 そういった神秘性の受け皿としての日本は、地理的にも、またその秘匿性についてもきっと好奇心をくすぐるものだったに違いない。 余談だがマルコポーロという人は、例えば物語を説明する時に、「都市には100万の建物があって」とか「100万の金が街にあふれて」みたいな、なんでも100万と例える癖があったようで、「100万の君」と呼ばれるほど誇張することが多かったようだ。 今ならそんなわけないじゃんでも、冒険家という肩書が乗っかると、どこか信じてしまいたいという気持ちが働くのかもしれない。 そういったこともあってこの書物に多くの人が興味を持ち、「嘘じゃん!?」と思える内容でも信じてしまう人が多かったのかもしれない。 個人的意見ではあるが、マンガやゲームに代表される日本人の文化がいま世界で受けているのは、日本が海に囲まれている事が関係していると思っている。 日本の文化はその大部分が中国から来たもので、江戸時代も長く鎖国をしていた影響からか、日本人の多くの興味は世界ではなく国内に向いている。 ビジネスの世界では国内にとどまるより世界に出向くほうが良いに決まっているのだが、文化面は他とまじりあわない事で、独自性を手に入れることができる。 もちろん融合する事が悪いことだとは決して思わないのだが、独自性は言い換えればブランドを作り出す。 メイドインジャパンも一つのブランドであればクールジャパンも立派なブランドである。 長い目で見れば、このようなブランド化こそが、ステータスを作り出し、それはあらゆる利益を生み出すのである。 ということで今回の映画は「ゴールド」である。 あらすじを簡単に言うと、インドネシアの山奥に金塊が出ると信じた金取引の会社経営者が、金の採掘に人生をふりまわされるという話なのだが、物語の主役であるゴールドは、その姿を見せない。 しかし、その姿なきものに人々は想像を膨らませ、欲を持ち、そしてやがてその夢が消え去るまで、踊らされ続ける。 過去日本は映画の中のゴールドのように、大きな夢を抱えた存在だったのかもしれない。 今日本で金はほぼ取れない。 夢がいつか覚めるように、神秘的な黄金の国はすでに無くなって久しい。 しかし今も日本では多くの外国の若者の憧れでもあり、かつたくさんの夢を持つ国に成長している。 日本の生み出すものは文化的に多方面で評価されている。 日本人の持つ美意識がひょっとしたら世界でも稀有な者なのかもしれない。 日本が持つゴールドはその国民性にあるのだとしたら未来は明るい。
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