ブラックスワン

監督 ダーレン・アロノフスキー
出演 ナタリー・ポートマン ヴァンサン・カッセル
制作 2010年アメリカ

滅びゆくものの美しさ

(2012年01月01日更新)

  • 世の中には予期せぬことが起きるものである。 昔友達の会社勤めの女の子から聞いた話なのだが、財布を落としてしまい、来た道を返したが見つからない。 幸か不幸か、財布に免許証などは入っていなかったが、多少のお金が入っていたので、ついてないなあと諦めて会社に来ると、机の上になぜか自分の財布が置いてある。聞くと、近所に住んでいる女性が財布が落ちているのを見つけ、その女の子をよく朝の財布を拾った時間帯に見かけていたことから、この会社の人かもしれないと財布を届けたそうで、まさに奇跡というか、かなり運の良い話である。 何故運が良いと言い切れるかというと、僕は昔スキー場で10万以上入った財布を落としたが、見つからなかった経験があるからである。 ついてない男の経験測は信じられないだろうとネットで調べてみると、イギリスの実験では、落とした財布が帰ってくる確率は42%だそうで、条件として「財布には現金を入れない」というものであったそうなので、きっと現金が入った財布ならばもっと低い結果になるのではないだろうが。 ちなみに一番返却率が高かったのは、赤ちゃんの写真が入っているもので88%が帰ってきたそうなので、よく財布を落とす方は、赤ちゃんの写真を入れておくことをおすすめします。 話は少しだけ変わるが、金融経済用語で「ブラックスワン理論」という言葉がある。 用語としての意味は、確率論や従来からの知識・経験からでは予測できない極端な現象が発生し、その現象が人々に多大な影響を与えることだそうだ。 要は白鳥という名前は、白鳥が白しかいないという理論でそう名付けられたのだが、オーストラリアで黒い白鳥が見つかってしまい、白鳥は白だけではでなくなってしまう。 つまり黒い白鳥がいることを知っていれば、誰も白鳥とは名付けないわけで、黒鳥がいて初めて白以外の白鳥が存在することを検証することが出来るという、なんだか卵か先か鶏が先かみたいな話に聞こえなくもない。 ブラックスワン理論が象徴するものは、理論で想定できない部分がある以上は、理論の中に不確実な要素を盛り込んでおく必要があるということで、最初から白鳥なんて名前をつけたら、黒い白鳥がいた時に困るよって言うことだろうか? 先の話しになぞらえれば、財布を購入した段階で財布を落とすことや盗まれることを想定して、財布にはチェーンを付けるとか、貴重品を入れないようにするとか。 そもそもお金は財布以外ものものに入れるようにするとか、考えだしたらキリがないのでこの辺でやめておきます。 世の中には不確実なものが多く、その不確実性ゆえに予期せぬこともおきる。 「ブラックスワン」はおそらくナタリーポートマンの代表作となるのではなかろうか? 映画でバレエ演劇の「白鳥の湖」の中で踊る彼女は、誰よりも美しく、そして純粋だった。 プリマに選ばれた彼女は、懸命に力尽きるまで踊り、その演技で踊ることへの情熱と執念、そして実際の踊りによる躍動感が十分に感じられた。 同時に彼女の踊ることへの情熱は、儚さにつながる。 ナタリーポートマンの姿は、美しい舞踊と対比的な、承認欲求ともいえる人を蹴落としてでも評価されたいという汚れた精神を内包した、滅びの美しさを見せてくれる。 不確実性は文化の上では、美しさを際立たせるものなのかもしれないが、それは桜の花の散るのに似て、美しさもあるが、切なくもある。 この映画のような、圧倒的な力を感じる映像を見たとき、僕は嘆息をする。 まだ幼かった「レオン」で見せた無垢な少女は、少し大人になり、人間の業を演じるまでに成長する。 まさに無垢な白鳥だと思っていた彼女が、少し妖艶な黒鳥だったと思えた。 とても良い映画だと思った。 追記 スキー場で落とした財布を拾ってネコババした覚えのある方、返してください。
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