バグダッド・カフェ

監督 パーシー・アドロン
出演 マリアンネ・ゼーゲブレヒト
制作 1987年西ドイツ

コーリング・ユー

(2012年01月01日更新)

  • 先日似顔絵付きの名刺を貰った。 顔の部分だけ大きくて、ドラえもんもびっくりの2頭身で、可愛くデフォルメされているので、女性受けはいいのかなあなんて思っていたが、相手は印刷屋なので、どこで評判がいいのだろうと、すこし疑問に思っていた。 ところがこの前、その営業マンから電話があり、すっかり名前も忘れていたためか、会社名を聞いてもなかなか思い出せず、電話を受けながら名刺をぱらぱら見ていると、似顔絵の営業マンが出てきて、「ああ、あの人か」という具合になった。 この時、初めて名前を覚えてもらうための工夫はしてみるものだと思った。 昔、上司から人の名前を覚えるコツを教えてもらった。 その方は、全国に数百人いる社員を全て覚えているという、驚異的な記憶力の持ち主だったのだが、その方が言うには名前を記憶するのではなく、名前とセットでその人間を象徴するものを覚えれば自然と記憶できるという。 例えば、「山田花子」「甲高い声。カピパラ顔。女子プロレスラー」のように、できるだけ変わらない象徴的な個人を連想させる内容を記憶していくと記憶に残りやすいようだ。 この象徴的というのが工夫どころで、顔の特徴はもちろん、学歴、出身地、話し方、親の職業と、個人のIDのどれを切り取って、自分の記憶につなげるかは随分とセンスがいるだろう。  個人的には見た目による悪口が、一番覚えやすい。 映画の中でも象徴的な映像を前に押し出して、全体的な内容を植え付けようとする方法がある。 ローマの休日の「ベスパ」や七年目の浮気の「白いドレス」は物語のイメージを象徴的にし、なお記憶にも残りやすい。 「リング」の井戸もそれにあたるかもしれない。 その象徴的な何かが、作品の世界観と合うと、名作として人々の心にも残りやすい。 バグダット・カフェはその象徴として、砂漠に不釣合な給水塔が物語のなかに幾度か登場する。 舞台はアリゾナ州にある荒涼たる砂漠にあるモーテルに併設されるカフェで、まあ砂漠にカフェも不釣合なのだが、そのカフェに現れるドイツ人の女性が、乾いた人々の心を少しづつ潤していくという、ハートウォームなお話です。 流れるジュベッタ・スティールが歌う主題歌「コーリング・ユー」が、その映像を体の中に染み込ませるように注ぎ込まれ、見ている人の心を潤わせてくれる。 バグダッドカフェのポスターに描かれた大きな給水塔とよく晴れた青い空と、荒涼たる空気感。 この映画を見る前に見たこのポスターは、そのまま心のどこかで記憶され、同時に主人公の少し太めの、気立てのよい働き者のドイツ人を思い出させる。 そして映像を見ながら感じた、あの潤いを思い出し、同時に映画を思い出す。 この象徴が生きて初めてこの映画は輝きを持つのではないだろうか? 人もまた同じかもしれない。
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