ビューティフル・マインド

監督 ロン・ハワード
出演 ラッセル・クロウ エド・ハリス ジェニファー・コネリー
制作 2002年アメリカ

戦争により犠牲になった頭脳という意味では、大変に感慨あふれる映画

(2012年01月01日更新)

  • 近代の戦いは情報戦であるとよく言われる。 戦争では各国のスパイが暗躍し、敵の動きや戦力把握は勿論、情報操作や、民衆の扇動なども行い、戦争に勝つことを目的として発動する。 また経済でも敵企業に産業スパイを送り込み、商品情報などをいち早く入れて対策を練る。 まさに戦いの場面においては、敵を知ることが勝利への一歩というわけである。 この情報戦の中で、特に凄まじいのは暗号の解読で、特に有名なのはドイツのエニグマの暗号に関わる解読作業にまつわるエピソードである。 エニグマはシーザー暗号というものををさらに複雑化したもので、構造はシンプルではある。 シーザー暗号というものを簡単に説明すると、例えば「ABC」と言う文字を3文字ずらすと「DEF」になるように、規則パターンを決めて、文章を作るもので、「HELLO」は「KHOOR」となるので、一見すると訳が分からない。 実際の暗号で、3文字ずらす程度の変化では、すぐにバレてしまいそうなので、これを暗号っぽく難しくするため、この文字のずれをランダムにする。 例えば「A→J B→K C→L」みたいな感じでずらしておいて、その換字表みたいなものをあらかじめ受け取り側が知っていれば、仮に情報を盗んでもなかなか解読は出来ない。 しかしこの方法の難点は、規則があるため長文になるとその法則がわかりやすくなる点で、例えば英語の単語で一番多いアルファベットは「e」であり、文書の中でこの「e」に変わるものを探せば、必然として代用される単語に検討が付く。 あとはこの「e」を突破口に単語に分け、解読を進めて行けば良いというわけである。 下手をすればナンプレよりも平文化するのは簡単かもしれない。 このような欠点さえも克服したのがエニグマである。 エニグマは先程の例のような文字の配列パターンを決めず、「キーボード」と文字が点滅する「ランプ」と「スクランブラー」と呼ばれるローターとリフレクターからなっており、「キーボード」で文字を打つと「スクランブラー」で文字が選択され「ランプ」で光った文字を書き出して暗号文とする。 スクランブラーの「ローター」は一文字打つたびに変更され、またキーの配列の変更は「プラグボード」にケーブルを指すことで変更ができるため、配列も相当な種類が存在している。 おまけにローターの変更も可能なので、要は一文字ずつに換字表が作成されるため、暗号化・復号の鍵は、いくつかあるローターのうちどれを使うかの組み合わせと順序、ローターの目盛りの初期位置、およびプラグボード配線が必要である。 そんなものは打点した人間がエニグマを使って再現する以外にしか解読は有り得ない。 しかし、これを敵国である連合国軍は解読に成功する。 それはポーランドの若き数学者の解読作業と、スパイの諜報活動による賜物であった。 その結果ドイツのUボートは壊滅的な損害を与えられ、戦争の勝利に大きく関与することができたのである。 この情報戦の勝利をもたらしたものは何か。 それはポーランドが持っていたドイツに対する恐怖心で、この不可能と思われた暗号の解読に成功したのも、ポーランドがドイツに苦しめられた歴史を持つことによる、恐怖心に基づくモチベーションによるものだった。 窮鼠猫を噛むの心境だろうか。 「ビューティフル・マインド」は「ゲームの理論」でノーベル経済学賞を得たジョン・ナッシュの伝記をもとに作られた映画である。 主人公は天才的な数学者で、それ故に不穏な時代の暗号解読を軍から命じられ、それが心の闇となってしまう。 映画は統合失調症という病気の進行により、幻覚や妄想を進めてしまうのだが、このへんは映画的な演出として見るほうが無難な部分もあるが、戦争により犠牲になった頭脳という意味では、大変に感慨あふれる映画である。 妻役のジェニファー・コネリーが事の他大人びていて、「ラビリンス」の頃の少女だった時代を思うと懐かしく、魅力ある成長を遂げた事に、胸が熱くなった。
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