オデッセイ

監督 リドリー・スコット
出演 マッド・デイモン ジェシカ・チャステイン
制作 2015年 アメリカ

未知の世界で生き抜くということは、時に大きな犠牲や苦しみを生む

(2016年10月25日更新)

  • 若い人は知らないと思うが、僕らくらいの世代(昭和40年代の生まれ)の人に宇宙人を書いてもらうと、真っ青なプーチンみたいなイスカンダル出身のおっさんを書くか、タコを書く人が多い。 何故タコなのかといわれると、H・Gウェルズという人が、1897年に書いた連載小説「宇宙戦争」で描かれた火星人がタコだったからなのだが、でもなんでタコにしたのかを聞かれると、これがなかなかよく考えられている。 まず火星は地球の半分ほどの直系の惑星のため、地球よりも重力が弱いと考えられる。 重力が弱いということは、体を支えるための足や胴体は細くても問題ないと思われる。 しかし、地球に来るくらいなので、頭は良いはずである。 そうなると頭はきっと大きいはずなので、頭を支えるための体はいくつかあると良いだろう。 人類はサルから進化したので二足歩行だが、そもそも二足歩行である必要はない。 そんなこんなでタコが出来上がったのだと思うのだが、この想像がなかなかにインパクトがあったので、100年という長い間、そのイメージが付いたのかもしれない。 タコをイメージしたデザイナーがいたとしたら、本望と言える仕事内容である。 最近の技術の進歩で、火星の実態がどんどんわかり始めている。 今や衛星から火星自体の写真を撮ることもできるようで、それこそグーグルストリートビューのようにショット毎に火星の様子が写真に収められているという。 そうして取られた写真には、運河の跡や人工物のような建物など、ロマンを感じるものがあるようだが、同時にはっきりとした文明の跡は見つけられないので、火星に火星人はいないのだという結論が突きつけられ、ロマンや想像が技術進歩に反比例していくのは、仕方がないことではあるがどこかで寂しさを感じてしまう。 技術の進歩によって多くの想像を失っていったのが現代という時代だと思うのだが、一方でこれからの時代は科学的な解釈に合わせた、もう少し高度な不思議が見えてくるだろう。 その中で僕たちは再び夢を見る事ができる。 夢を見るからこそ、人間は技術を向上させてきたわけで、それは人間が考えるということを止めない限り、永遠に繰り返されるものだと思う。 素粒子の世界や宇宙科学の学者の方には大きな期待をしたい所である。 そんなロマンに思いをはせていたら、検索した記事の中に火星の土地販売の話があった。 売っているのはルナエナジーという会社だそうで、言ったもん勝ちの土地契約を行っているみたいに見受けられる。 そんなものがまかり通るのか不思議で調べてみると、無効・有効どちらの意見もあるそうで、有効になるんだったら、元出無しののいい商売だなあと思ってしまうのは僕だけだろうか。 とはいえ、なんだかんだで、じゃあ火星はあなたのものですよ、と言われても、火星に移住できるのは、今から何年後の話なのか?と聞かれると、人類が宇宙に出てかれこれ50年以上経ってはいるが、未だ月面以上へ進めていないことを考えると、最低でもひ孫が成人するくらいの時間はかかるのではないかなあとは思う。 そもそも人類が火星に着陸すること自体、僕が生きている間はお目にかかれないのではないかなあと思うので、結局火星を購入するということは、100年先の株価を買うのと同じようなもので、当たりなのか外れなのかもわからない。 移住はそれよりも当然ハードルが高い話なので、人類を無事に火星に送り届け、しかもその大地に移住するためのインフラを整備し、安全を担保するのだから、2世代でも実現は不可能じゃないかなあと思うと、やっぱり火星の土地を買うのはロマンを買うのと同じことなのかもしれない。 昔手塚治虫さんのたぶん「火の鳥」だったと思うのだが、悪い不動産屋に騙されて無人の不毛な惑星に移り住んでしまったカップルが、やがて女性だけが生き残り、彼女を女王とする国をその星で作るという話があった。 もちろん漫画なので現実味も無い内容ではあるのだが、それでも星に一人で生きていくのは幾何の苦労があっただろうかと想像すると心が重くなる。 そのサバイバル術は、ロビンソンくらいの無人島生活ははるかに凌ぐ苦労があったに違いない。 実際に見知らぬ星に一人残されてしまって生き延びろと言われても、僕なら1日くらいで世の中にグッドバイしてしまいそうなので、なるべく地球、とりわけ日本にとどまっていたいなあと思うのが本音のところである。 というようなことを考えさせられる今回の映画紹介は「オデッセイ」である。 主人公はマッド・デイモンで、手塚治虫さながらの火星に独りぼっちの映画である。 事故から火星を脱出できず、火星のベースキャンプで独りで生きていかなければならなくなった宇宙飛行士は、専門の植物学の知識を生かし、食料と水を確保し、何とか地球に生還する。 科学の時代の漂流物語はもじゃもじゃのひげやらグロテスクな食事などのシーンは無く、比較的スマートに火星の生活を乗り切っていく姿が、新しいサバイバルの形なのかもしれないが、開拓の大変さや見知らぬ場所で生き抜くサバイバル映画の醍醐味は十分に味わえた。 やがて主人公は奇跡ともいえる生還を果たすのだが、執念が未来を切り開くことを教えられる。 未知の世界で生き抜くということは、時に大きな犠牲や苦しみを生む。 先人達は多くの苦難を乗り越えて土地を開拓し、技術を進歩させ、そして連綿と続く命のリレーの果てに今の社会が築かれている。 ただ思い付きで土地を売っている連中に、その苦労を少しでも味わわせてやりたいものである。
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