えくぼ  ボンクラ

賭け事と拝金主義

(2012年11月2日更新)

  • ボンクラとは盆暗と書くそうで、もともとは賭博用語からきているそうだ。 江戸時代くらいの賭博はそのほとんどがサイコロを使うものが多くて、サイコロを振ってその目を当てるものが多かった。 例えば丁半などは、振ったサイコロの目が偶数ならば「丁」、奇数ならば「半」で、それを予想するとう単純なゲームで、よく時代劇で見かける賭場場のシーンでやられているのは、大抵は丁半が多い。 ボンクラとは、このサイコロの目を当てるのが苦手な人、つまり賭け事に弱い人のことを指すそうで、要は盆(盆茣蓙)に暗い(分かっていない)ということからボンクラとなるらしい。 因みにこの盆茣蓙とは、丁半の壺を伏せる布のことである。 こういった博打用語は今も何個か残っていて、例えばタメ口のタメは、ゾロ目(同じ目のサイコロが出ること)のことを指し、一か八かは「丁半」の上の文字をもじったと言われている。 何故博打の言葉がこうして今も残っているのかは、たぶん格好がよかったからだろう。 賭場でなけなしの金を賭けて、儚い夢を見る生き方自体、刹那的ではあるがどこかしら格好良さがある。 そもそも博徒自体が、退廃的な雰囲気と勝負に賭ける男たちの戦いという感じがして、ヒリヒリした感じがたまらない。 要は悪いものに対しての憧れのようなものが今も昔も変わらずあって、そんな格好のいい人たちが使う言葉なので、自分も背伸びして使ってみる内に、言葉だけが残って深く浸透していく。 昔は映画でよく見られた博奕打ちだが、ヤクザの資金源になるとかで、最近は映画の世界でさえあまりお目にかからなくなった。 僕の周りでも、野球のトトカルチョや、花札や賭け麻雀など、昔は掃いて捨てるほどあった賭け行為が、本当にぱったりと見なくなった気がする。 そもそも賭博は刑法で禁止されているので、それはそれで社会的には良いことなのかもしれないが、しかし、賭け事に対する尋常ではない緊張感を、他のどのような行為に対し転化しているのだろう。 個人的には、生活に困らないお小遣い程度の賭け事は、寧ろやるべきではないかと思っている。 僕も競馬ではたまに勝ちよく負けるのだが、金額ではなく、自分の予想が的中した時のあの根拠のない自信のようなものは、他ではあまり味わえない。 その行為自体で何か得しようということではなく、毎日一生懸命プログラムを書いたり、文書を作成したりして稼いだお金を無駄にしている感じが、たまらなく良いのである。 競馬好きで知られる作家の菊池寛(直木賞とか作った人です)は、自身の競馬哲学でも、 「人に聞いて取った200円は、自分で考えた50円よりも価値は低い」 というようなことを言っている。 競馬の良さは、その推理を、馬の血統や前走やその他いろんな情報を組み合わせて、自分なりに解きほぐした方程式の解に対し、正誤を付ける行為に似ている。 賭けとは、根拠は乏しいが自分なりに導き出された方程式を持って、未来を言い当てるゲームと言える。 一方で単純にお金を賭ける行為は生活が破綻するとか、お金をかける事が意地汚いだのという風潮がある。 それこそファシズム的な考え方で、賭け行為は生きるため(要は食べるとか寝るとか)にはあまり関係の無いことを熱心に考えたり、勝てないと分かっていることをやるという無駄な行為を行っている所が、寧ろ有り体の人間らしさを感じるし、それを悪いことと決めて最初から封じ込めてしまうのは、何となく臭いものには蓋的な感じが見えてどうかと思う。 その癖に公営ギャンブルとして大々的に国が胴元になってギャンブルを推進している。 しかも、潤沢な資金を元に、ほとんどの企業でもあまりできなくなった(僕の会社も)CMなどを利用し、大々的な広告活動を繰り広げている。 この金のもとになるのは当然ながら消費者が買う馬券や宝くじなのだが、例えば競馬の場合は、1万円の勝ち馬投票券に対し7500円を買うというギャンブルで、内訳は10%は国庫に、15%はJRAに入る仕組みになっている。 無論馬の生産者には勝たなければお金はそんなに入らないし、地方競馬場も散々な経営状況である。 この暴利を元手にしているから、JRAの管理運営する競馬場はどこも清潔で綺麗に保たれているのだと勘ぐってしまう。 当然ながら競馬は、ギャンブルにおける期待値(かけた金額に対し戻ってくると思われる金額)も、カジノでやるものに比べると低く、このように胴元である国が儲かる仕組みを作っている方が、ヤクザもびっくりな考え方に感じるのは僕だけだろうか。 まさしくこのような真の姿が見えていない人をボンクラと良い、同時にそんな勝てない競馬をやり続ける僕のような人間もボンクラと言える。 賭け事一つ考えても、国の搾取の構図と今の社会の拝金主義的傾向が見える気がする。
■広告

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
↑↑クリックお願いします↑↑

Previous:えくぼ Next:らっきょう 目次へ