ランボルギーニカウンタック  クズ

語彙と語感

(2012年5月27日更新)

  • 大学生の頃の話だが、酒の席でクズの話になった。 その時、聞いたクズは所謂ヒモ生活を送る男の話しで、職業はDJらしいのだが、日がな仕事もせずにたまに出かけてはイベント参加と称して彼女に金をせびるらしい。 この話自体はどこにでもある話なのだが、この話の中で印象的だったのが、そのクズが友達に話した女性から金をせびる方法というものだった。 話しによると彼女とか女性から金をせびる時は、小さい額を借りるのではなく一気に大きい金額の方が良いそうだ。 理由は、女性は金額の大小よりもお金を貸すという行為自体を覚えているものなので、1万を5回より一気に5万借りる方が借りやすいという事らしい。 そうなんだろうかと女の子の友達に聞いてみるが、「そうかもしれん」という回答だったので、そのクズもなかなか良い人間観察だったのかもしれない。 最近二人の女性にプロポーズしていたことが発覚した若手の俳優がいたが、クズを考えるときには、大抵女性が絡んでくる気がする。 そもそも女性にクズが居ない気がするのは僕だけだろうか。 クズを定義すると、反社会的な行動をする、小心者というところだろうか。 辞書で調べても「役に立たないもの」と書いているので、まあこのイメージには概ね問題はないとは思うのだが、クズという言葉の影に、どうしても救ってあげたい母性本能のようなものが、ちらりと覗かせる。 それは関西で言うところの「アホ」と言う言葉みたいなもので、アホには相手を馬鹿にする揶揄する気持ちと、同時に相手を褒めているところがある。 一見矛盾するようだが、「お前アホやなあ」には、「お前はアホなことばっかりやって親が泣くで」と「アホなことばっかりやって、お前は楽しませてくれる奴やのう」の2種類が混在しているのである。 これが「馬鹿」という言葉だと、本当に額面通りの馬鹿しか意味を持っていないように関西人の僕には聞こえる。 クズにも「お前みたいなクズは親が泣くわ」的なクズと、「クズみたいなこと言って、もっと気張らんといけんよ」という2種類が混在しているようである。 言うまでもないが後者のクズは、何となくだが本人への期待のようなものを感じられる。 多くの言葉には、額面で捉えた意味とは別に、その言葉自体が持つ雰囲気みたいなものだろうか、人によって若干異なる感覚のようなものがあって、特に悪い言葉ほど、そういう意味合いを持っている気がする。 それはハイジがクララに行った「クララの意気地なし」と同じで、クララに対しての期待値が高い分だけ出てしまった罵りの言葉で、その期待値ゆえに、その言葉自体が優しさのある言葉に聞こえてしまう。 特に「アホ」の様な汎用性の高い言葉は、大変に変化しやすい言葉といえ、関西ではアホは漫才のボケに対して使われる代表的な言葉もあってか、日常的によく使う言葉でもある。 そのため使われ方にアレンジが入り、逆の意味合いを持つことになったのかもしれない。 若い子たちが「やばい」を額面通りの「やばい」と、「すごくいい」という意味で使っているのと同じである。 しかし、クズ自身は、まだ負のイメージが強い言葉である。 因みに僕は、女の子に言われるクズはどちらかというとグっとくる。 ホテルに入るやいなやすぐにベッドに押し倒したときに、少し節目勝ちに「もう・・・。クズ」 何て言われたら、それはテンションが上がりそうだ。 というか、そのシチュエーションなら何でもテンションが上がるか。 でも実際にいい雰囲気になって、ベッドに抱き合っているのにエレクトしなかったりして言われる「もう・・・。グズ」は立ち直れなさそうだ。 結局はどんな言葉も、シチュエーションと相手次第で良くも悪くもなるのかもしれない。
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