コギト  時計

セシウム原子時計

(2012年2月08日更新)

  • 昔付き合っていた彼女と別れるときに、「付き合ってて一度も待ち合わせの時間通りに来てくれんかった」と言われたことがある。 悪いことをしたなあとは思うのだが、そんなこと別れる間際に言わんでもとは思った。 実際には時間を少しオーバーした程度のことなのだが、待たされた方はよく覚えているもので、特に僕の場合は毎回遅れるので、少しの時間だとは言え、記憶には残りやすいのだろう。 やっぱり僕がいかんのだろうが、同時に時間を守るということに対して、どれだけの意味があるのだろうと思う。 僕も別になんでもかんでも待ち合わせに遅れるわけではないので、人を待つ経験もしたことはある。 しかし、その間も音楽を聴いたり、携帯を弄ってみたりと、やることはあるので、そんなに無駄な時間を過ごしたなあとは思ったことがない。 仮に無駄な時間だったなあと思ったとしても、それがなんだと言うのだろうか。 長い人生のたった数十分の話で、そこまで怒らなくてもいいのではないだろうか。 というような事を常日頃から考えていたら、イギリスのエレベーターは閉まるのボタンが無いということを何かで知った。 イギリス人は、人生の何秒間を急ぐ必要が無いと考えるので、エレベータの閉まるのボタンが無いというのが理由らしく、少し鼻にはつくが、確かにそうだなあと思った。 とにかく現代人は時間を気にしすぎると思う。 仕事柄外部業者の方と会うことが多いのだが、時間を気にしてか早く着いても中には入ってこず、会社周辺で油を売ったりする営業の方なんかを見ると、別にいいのにと心底思う。 社会人としては約束も守れない、というレッテルが怖いからだろうが、早く来た分には電話でもくれればと思う。 そもそも時間はご承知のように地球の公転周期にあわせて基準が作られている。 要は地球がぐるりと回るのが1日とするならばその時間を回る速度に対し、時間を決めているのである。 そんなざっくりしたものさしで作られた時間なんて本当に合ってるかわかんないじゃんと思っていると、最近では原子時計によって正確な秒までも計算されそれをもとに時間が厳密に決められているらしい。 代表的なものはセシウム原子を使った原子時計で、原理はセシウム原子にレーザーを当てて、電子の状態をそろえ、その後91億9263万1770Hz(約9.1GHz)の電波を当てることで、電子の状態が不安定化し、その変化をチェックする。 端的に言うと、9.1GHzの電波を当てると原子が1秒間に91億9263万1770回の振動がある。 その振動の数がおよそ一定なので、1秒の長さがわかるという。 何だかめんどくさそうな話ではあるが、ここまで時間に正確さを求めるのは訳がある。 現代は時間の中に人間が生きており、例えば株式は秒単位で儲けが変わるし、賃金も時間に換算して支払われる。 つまりは時間が異なるということは、経済的な損失も起こりうるため、その共通時間に誤差があってはいけないわけである。 時間の正確さは経済的利益に直結しているのである。 そのため秒単位の正確さが必要になるし、時間を厳密に守っていくことが利益を確保することにつながるわけである。 そうやって考えていくと時間にルーズな人間は、経済に頓着しない人であるとも言えるので、社会人としては相当に恥ずかしい。 僕は今時計も持っていないので、せめて時計くらいはしようかなあなんて反省をしていたら、今度は昔後輩がした遅刻した時の言い訳を思い出した。 遅れた後輩に対し、先生がその遅刻の理由を聞くと「電車が遅れまして」、と言う。 何時何分の電車だ、と言うと先生と同じ電車の時刻を言うので、なんでお前だけ遅れるんだと怒鳴ると、 「僕の乗ろうと思った電車がその時間だったんです。だけど乗れなくて、次の電車に乗り遅れたので、遅刻しました。」 と涼しい顔で答えた。 言うまでもなく遅刻の理由は、「電車に乗り遅れたため」であるが、まあ物は言いようである。 遅刻も人の個性が見えて、たまにはしてみるのも良いかもしれない。
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