二・二六事件1

1936年2月26日

(2015年01月23日更新)

  • 1935年8月12日(昭和10年)事件が起こる。 皇道派の将校だった相沢三郎陸軍中佐が、白昼堂々統制派のリーダーの永田鉄山軍務局長を、当時東京の三宅坂にあった陸軍省軍務局長室に乗り込み、軍刀で刺突して殺害してしまう。 動機は陸軍士官学校事件(十一月事件)の嫌疑で休職処分となり、その後免官となる磯部浅一、村中孝次への処遇への義憤とされている。 相沢はすぐに捉えられ、翌年には銃殺刑に処されるが、この事件をきっかけに二・二六事件へつながっていく。 相沢三郎が事件を起こした最大の動機は、統制派に対する不満である。 永田が行った皇道派の排除は、相沢の目には軍部の人事を差配する統帥権干犯に写り、それがそのまま軍の危機、国家の危機につながると考えた。 随分真っ直ぐな人だが、それだけ純粋な人だったのかもしれないが、手段が暴力だというのがやっぱりまずい。 まもなく志を同じくする皇道派の面々は、相沢に続けという気持ちが湧いてくる。 結果、昭和史最大のクーデターにつながるわけである。 事件は1936年(昭和11年)2月26日に起こる。 昭和11年という都市は雪が多い年だったようで、同年2月4日には大風雪が東京を襲い、積雪が都市を覆っていた。 事件当日も、東京都内は雪の真っ白の中だった。 決起部隊は外套を着込み、朝五時に襲撃目標に向けて動き始める。 近衛歩兵第三連隊、歩兵第一連隊、歩兵第三連隊らの部隊1,400余名を指揮し、首相官邸や重臣の私邸7箇所を襲撃、8名を殺害することになる。 主な首謀者は、村中孝次、磯部浅一、野中四郎、安藤輝三、栗原安秀、中橋基明のいずれも皇道派の青年将校または退役軍人で、狙われたのが首相岡田啓介を筆頭に、陸軍大佐松尾伝蔵(死亡)、蔵相高橋是清(死亡)、内大臣斎藤實(死亡)、侍従長鈴木貫太郎(重傷)、教育総監渡辺錠太郎(死亡)、牧野伸顕(逃亡)などの重臣だった。 同様に警視庁や当時政治の中枢のあった永田町・三宅坂一帯を占拠してしまう。 この日天皇が事件の知らせを聞いたのは午前五時四十分に、宮城にいた侍従甘露寺受長からだった。 甘露寺侍従は鈴木貫太郎の夫人より連絡を受け、えらいことが起こったと天皇にいち早く報告をする。 天皇は一報を聞き、軍服に着替え、本庄繁侍従武官長に「陸軍の反乱である。直ちに事件を終息させよ」と命じる。 要は大元帥として陸軍のクーデターを鎮圧する覚悟で望んだというわけである。 二・二六事件を起こした青年将校は、国のためにクーデターを起こす。 おそらく心のどこかでは「陛下ならわかってくださる」という気持ちがあったとは思うのだが、天皇は事件勃発まもなく、既に青年将校の行為を反乱と見ていたのである。 さて、最終の目標だった渡辺錠太郎教育総監を襲撃した後、陸軍省官邸応接室で、川島陸軍大臣に決起趣意書を読み上げ、決起の目的及び要望事項を提出する。 内容は天皇陛下の奏上と統制派大将の罷免、及び皇道派幹部の招集などだった。 要するに天皇にこの度の行動を認めてもらい、統制派の将軍を一層し、皇道派中心の軍部にしたいというものだった。 しかしこの時点で天皇は彼らを反乱軍としているわけなので、認めてもらうも何もないわけである。 同時に彼らは宮城に向かい、まるっと占拠しようと企んでいた。 しかし近衛兵が彼らを城内に入れようはずもない。 ここで近衛歩兵第三連隊が出てくるわけである。 指揮は中橋基明中尉で、彼らは高橋是清を襲撃した後、近衛兵の守る宮城に乗り込むわけである。 同じ近衛兵とは言え、彼らを受け入れるかは微妙なところなのだが、結果は守備を行っていた近衛師団の大高少尉の拒否により、そのまま目的を達せず、別行動で宮城を抑える予定だった警視庁を占拠していた400名ばかりの兵も、何もできずにその日は終わってしまう。 また同日、川島陸軍大臣は、青年将校の気持ちを汲みしたのか、対応ができずにやむを得ずなのか、天皇に拝謁し、彼らから受け取っていた決起趣意書を読み上げ、状況を説明する。 これに対し、天皇は「すぐに事件を鎮圧せよと言ったのに、何でそんなものを読み聞かせるのか」と一蹴する。 何度も言うが、青年将校の行動は、天皇にはただの反乱に写っていたのである。 二・二六事件は決起の数時間後には、もう勝敗は決していたと言える。 天皇の腹づもりは固く、宮城の占拠もままならず、大義を失いつつも事件の日を終えてしまう。 慌てふためくのは陸軍内部だけで、その混乱で決起組は一喜一憂をするのだが、命運は既に決まっていたと言える。 出典・資料 ウィキペディア 「二・二六事件」 半藤一利 「昭和史」 平凡社 松本清張 「昭和史発掘」文藝春秋
■広告

にほんブログ村 歴史ブログへ
↑↑クリックお願いします↑↑

Previous:二・二六事件への布石3 Next:二・二六事件2 目次へ