マネー・ショート 華麗なる大逆転

監督 アダム・マッケイ
出演 クリスチャン・ベイル  スティーヴ・カレル
制作 2015年 アメリカ

サブプライムローン

(2016年11月06日更新)

  • 2008年9月にアメリカでリーマンショックが起こった。 このニュースが報じられた時、バブル景気を思い浮かべた人も多いだろう。 確かに好景気に沸いたアメリカが、泡が吹き飛ぶがごとく没落していく姿は、バブル期の日本経済の凋落に似たものを感じる。 しかし、実際のところリーマンショックは日本のバブル景気よりも根が深い問題を抱えている。 いつもは映画評(でもないですかね)のこのエッセイサイトですが、今回の映画の内容がリーマンショックを舞台に描かれているため、映画とか観てちょっと詳しくなったので何故リーマンショックが起きたのかを説明していきます。 まずリーマンショックのリーマンだが、これはリーマン・ブラザーズという投資銀行のことである。 サラリーマン・ショックの略ではありません。 ちなみに投資銀行とは証券取引の免許を持つ金融機関のことで、大手都市銀3社や野村証券なんかが日本では有名である。 このリーマンさんがショックを受けることをしたのでリーマンショックなのだが、何がショックだったかというと倒産してしまったのである。 とは言え、一投資会社が倒産したくらいで、なんでショックなんだということであるが、要はこの大手投資会社の倒産により、アメリカの金融機関や投資銀行の経営が大きく悪化していることを世に知らしめたのである。 景気とは字のごとく気分で変わるものである。 このことが世間に知れ渡り、結果として株が暴落し、企業倒産が相次ぐ事態となったわけである。 では何故、経営は悪化してしまったのか? この話を進めるにあたり、ちょっと違う話から入っていかなければならないのだが、実はこの倒産劇の裏にはある金融商品の存在があった。 それがかの有名な「サブプライムローン」である。 サブプライムとはプライム(主な・主要な)のサブですから、プライムほどではないサブ的なローンという直訳だろうか。 分かりやすく言うと、プライムローンが安定した普通のローンで、サブプライムローンは低所得者向けのローンと思ってもらえば良い。 またこの金融商品は何のローンかというと、住宅ローンであり、サブプライムローンとは低所得者向け住宅ローンのことである。 一般的にローンは社会的に信用のある人しか組めないものである。 社会的に信用のある人とは、安定した収入を得ることができるサラリーマンや、勤務先がつぶれることが無い公務員などで、別に正直な人間とかではない。 要は確実にお金が支払えるだろうという人に対して、ローンという手段があったのだが、サブプライムローンはそうではない、自営業の人など安定収入が見込みずらい、言ってしまえば返済ができなくなる可能性のある人に対して組まれるローンとして販売が始まる。 とは言え「返済が滞る可能性のある人にまでお金を貸していたらやばくね」と誰もが思うわけで、そのためにこの商品の特徴として、高い金利と住宅商品という、いざというときに売却して償却すれば良いという考えに基づいて設計されていた。 ここですでにちょっと怪しいのだが、不動産は確かに資産価値のあるものなので問題は無い。 サブプライムローンは住宅を買いたい不安定な収入の人たちによく売れるようになる。 当時のアメリカの不動産価値は右肩上がりで、値が上がればそれを投資目的で利用する人も出てくる。 そうすると実態のない不動産価値がどんどん上昇する。 まあ、日本のバブルと同じである。 勢いづいたサブプライムローンは、やがて低所得者、例えばアルバイト労働者などにもバンバン販売を行う。 なんでそんなことができたのかというと、このローンは最初は低金利からスタートし、やがて金利が上がっていくシステムで、且つ販売時に不動産価値は上がる話をするものだから、所得の少ないウェイトレスが不動産を3つも4つも持っているみたいな話が出てきてしまう。 審査はどうなっているんだと言いたいところだが、ここが実にアメリカらしい自己責任と、安易なアメリカンドリームを夢見た享楽的な風土を感じる。 この辺で少しきな臭くなってきたのを感じたと思う。 そう感じる人は正常で、金融商品を扱っていた人たちもそれを感じ始めるわけである。 そうすると今度は何を考え始めたかというと、サブプライムローンを証券化して売ってしまおうと考えるわけである。 ローンの証券化という聞きなれない言葉が出てきたので、ちょっと補足すると、まず金融機関は住宅ローンを販売する。 住宅ローンは将来受け取ることができるであろう金融資産なので、この債権(お金をもらう権利)を持っておけばお金にはなるのだが、出来ればすぐにお金が欲しい。 お金に換えるために住宅金融支援機構のような公的機関に債権を引き取ってもらい、受け取ったお金で新たな運用を行う。 この債権は実際に販売した元金に対し利息も引っ付いてきているので、まあまあお得な債権なので、これを証券化して投資家に買ってもらうわけである。 これがローンの証券化の仕組みであるが、これを利用してサブプライムローンもさらなる販売を行っていたのだが、しかし、不渡り感満載のこんな商品誰が買うのか?と誰もが思いそうなので、こんなことを考える。 「他の金融商品と抱き合わせで売れば、誰も気づかないのではないか?」 悪魔の声である。 そんなことがなんで起こるの?とは思うのだが、起こってしまったのである。 詳しくは「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」にも詳しいので興味のある人は見ていただくとよいのだが、この結果証券価値的にはいつ不渡りが出てもおかしくない爆弾証券が混じったものだが、格付け会社も「よい商品ですよ」のトリプルAを出してしまう。 ここもなんでやねんなのだが、この辺の経緯は映画の本編にも描かれているので理由は書かないが、結果として多くの投資家がだまされる形で、ダメローンが紛れた証券を買ってしまう。 さて浮かれ気分も久しからずで、好景気もいつまでも続かない。 緩やかに停滞し、土地の値段も下がり始める。 景気が悪くなると真っ先に影響を受けるのは低所得者である。 失業や減収などが起き始めると、ローンを払えない人が出てくる。 ローンが払えないから折角のマイホームも「for sale」となるわけで、しかもこの話は地方都市だけの話しではなくアメリカ全土の話しである。 町中、州中、国中がいわば不景気に傾いていくので、そこらで新築分譲地がゴーストタウン化してしまい、おまけにそんな土地には買い手はつかない。 やがて価格を下げても下げても買い手がつかず、気が付けば自己破産で債権は紙くず同然になる。 悪循環は転がる石のように加速し、気が付けば住宅ローンは赤字を計上し始め、巷には不良債権の雨あられである。 笑っていたのはその時に不動産を売っていた人たちだけである。 さてこの影響は一見関係のないと思っていた投資家に影響し始める。 何故なら持っている証券に、あのサブプライムローンが紛れているので、どんどん値下がりを始める。 最初は理解できなかった投資家も事態を把握すると、当然のことながらそんなくそ証券は売ってしまおうと考える。 商品の投げ売りである。 そして市場はパニックである。 そうすると投資銀行は一気に売りが押し寄せるわけなので、急な投げ売りによって支払いができず、小さな金融機関からつぶれ始める。 体力のないところから切り捨てられるのは生物の常だが、これがやがて業界最大手にまで影響を及ぼし始める。 どれだけ売ってたんだと思うところだが、この辺が実にアメリカっぽいなあと思ってしまう。 やがてリーマン・ブラザーズというビッグネームさえも息絶える日が来てしまい、皆がああ来るところまできた、財政出動して救わないと大変なことになるなあ、と思っていたのだが、結局政府は介入せず、倒産になってしまう。 強制的いやんバカンスの始まりである。 とまあ、今回は本当に長くなってしまったが、リーマンショックの概要はこんなところである。 この話しの中には、格付け機関の罪悪や、AIG社の自業自得の経営危機などによる企業倒産の危機などサブ的なお話もあるのだが、詳しく触れるとこのエッセイの幅を大きく超えてしまうので、興味のある方はググってみてください。 終わったことを後で責め立てるのは誰にもできるのだが、この事件(?)をいち早く察知したウォール街の天才がいたらしい。 その男を中心に話しが進められるのが、今回の映画紹介「マネー・ショート 華麗なる大逆転」である。 エンターテイメント要素も交えて、誰が悪いのかがぼんやりと見えてくる映画なので、あの時アメリカに何が起こったのかを、調べるのが面倒だという人にはお勧めです。 そしてもっと詳しく知りたい人は「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」をご覧ください。 お勧めです。
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