神様メール

監督 ジャコ・ヴァン・ドルマル
出演 ピリ・グロワーヌ
制作 2015年 フランス=ベルギー=ルクセンブルク

きっかっけがあれば自らを変えたいと思っているという事なのかも知れない

(2016年12月28日更新)

  • 探していたものがなくなった時に「ないないの神様」にお願いすると探し物を見つけてくれるという話を聞いたことがある。 随分小さな願いにいちいち対応してくれるんだなあと、変な関心をしたことを覚えているのだが、この辺は西洋には無い日本の神様の寛容さともいえる。 ここでいう西洋の神様とは、所謂キリスト教やイスラム教のような一神教を指すのではなく、ギリシャ神話や民族間に描かれる神のことなのだが、日本の神様は世界的に見ても珍しいくらい、数も多くいろんな神様がいらっしゃる。 例えば木や石などに宿る神様もいれば、ちょっと前に流行った歌によるとトイレにも神様はいるようだ。 紙様ではなくである。(しょうもない) 生活のいろんなところに神様がいる例としては、お地蔵さんがいらっしゃる。 今でも山道や田舎の道路のちょっとしたスペースなんかにも鎮座していらっしゃるのだが、これだけ多く点在している神様というのも、大変珍しい気がする。 お地蔵さんをもう少し詳しく書くと、お地蔵さんの正式名称は「地蔵菩薩」と言い、仏教の世界ではそこそこ偉い神様という事は、意外と知られていない。 どれくらい偉い方なのかというと、例えば仏教の世界では、人は悟りを経て仏になると如来という呼び名になる。 釈迦如来とか大日如来とかの如来である。 大日如来について書くと、元は別の国の神様で(インドだったかな?)本来は概念は違うのだが、本地垂迹説(日本の神様とほかの国の神様を同一にする思想)では天照大神と同一とされたりする。 天照大神は伊勢神宮に祀られていらっしゃる方である。 如来になるという事は、現世での修行、つまり輪廻の枠を超えることができたわけなので、かなりレベルが高い存在なのだが、菩薩はその一歩手間の存在で、人間以上仏様以下くらいだろうか。 そう聞くと一番じゃねえじゃんと思うのかもしれないが、そもそも地蔵菩薩は如来と同様の存在だったのだが、自ら子どもを救うことをしなければ如来にならないと宣言した、大変心の強いありがたい存在である。 辺鄙な場所にいるからと言ってぐれも無碍にしてはいけない存在である。 逆に言えばそんな徳の高そうな方がいろんな場所にいらっしゃるということが、日本の神様に対する信仰の高さを思わせ、また、宗教について独特のとらえ方をしていることが分かる。 日本人は無宗派の人が多いと言われるのだが、正月だの入試だので何かと神社に行くし、節目節目にはちゃんとお参りやお祓いなどの行動をとったりする。 かばんや財布には、よくわからないおふだが入っているだろうし、家の前に清めの塩を置いたりもする。 夏になると神輿と呼ばれる担ぎ物をして、神輿をふりふり裸の男たちが盛り上がったりする。 土地を買ったら神主を呼んで呪文を唱えて、何やら怪しい祈りをささげるし、もう書いたらきりがないくらい、宗教ではなくて何だと思うようなことを年がら年中行っている。 つまり日本人は無宗派ではなく、日本人独特の思想の中で、いろいろな神事を知らず知らずに行っているのである。 そしてその行為には、西洋のように露骨な「神様ヘルプ」が無く、心の中にそれぞれの神様を抱いて、何となくある生活に根差した「お願い」をするのである。 という事で、得意の宗教論はさておき、今回の映画は「神様メール」です。 神様がパソコンを使って人間社会のルールや、人の生き死にを決めているという、かなりトリッキーなコメディで、神様であるおやじに反発して天国を抜け出す娘という設定が、ちょうど年頃の娘を持つ僕としては、感情移入ができる内容ではあるのだが、それにしても神様が下衆い。 神様の決めたルールは、地味に人が嫌がることばかりで、人間が持つ自分への信仰さえもあざ笑う。 よくもまあこんなおっさんに神様などという役割を与えたものだと思うのだが、同時にここまで神様を揶揄して批判されたりしないかしらと、変な心配までしてしまう。 物語の中で、神様の娘が人々に余命をメール送信するシーンがある。 楽しいのは人々が自分の寿命を知りえた結果、新たな生き方を模索し始めるところにある。 人はきっかっけがあれば自らを変えたいと思っているという事なのかも知れないのだが、終わりが分かってからしか動けないというのもなんだか寂しい話である。 満足して生きる事で意味みたいなものが生まれるのかもしれないが、その意味が失われる生き方では、きっと後悔が残ってしまう。 後悔しないのは難しいが、後悔しないような生き方をすることは、気持ち次第でできるのかもしれない。
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