四つの力

力の統一理論

(2015年05月28日更新)

  • サロメは4人の人物を中心に物語が語られます。 キリさんは、素粒子の世界で言われる「四つの力」をもじって、四人の人物像を掘り下げてみることをナナさんに提案してみます。 ナナさんは、四人の人物をどう読み解いていくのでしょうか? 以降は次回の本編で確認いただくとして、今回の科学のお話は「四つの力」です。 今回はこの力についてお話していきます。

    ■四つの力とは?

    昔学校で習った、慣性の法則や作用・反作用の法則、万有引力の法則など、私たちの身の回りには多くの物理学的運動法則があります。 物理はちょっと苦手という人でも、これら全ての法則を、何となくですが生活の中で感じているはずです。 特に陸上競技を行う人なんかは、どうやれば早くスタートできるか?や投擲競技で、どうやったら遠くまでハンマーを飛ばすことができるのか? などはまさしくこういった物理法則を知ることで、より良い結果を得ることができるかもしれません。 しかし、こういったあらゆる法則も、必ず元になる「力」によって成り立っています。 例えば、先に述べた慣性の法則は重力という力が無ければ成立はしないでしょう。 お互い引き合うから月は地球の周りを回るのであって、地球は太陽の周りを回ります。 そして、この不思議な力について考えていくことが科学の使命であり、解き明かすことが、現代科学の一番の感心事といっても言い過ぎではないのです。 物理学の世界、特に素粒子の世界では、代表的な力が4つあると考えられています。 何で四つなのか?皆さんはそう疑問に思うのかもしれません。 誰も分からないことなんだから、ひょっとしたら10個かもしれないし、1個かもしれないじゃないか。 例えば摩擦によって生じる力があります。力が4つなんてありえない。浮力や圧力もここで言う力じゃないのか。 そんな声が聞こえてきそうですが、これらは四つの力でも十分に説明がつくため、単独の力とみなさなくて良いわけです。 このように、似た性質のものは統一することができるため、現代物理学の世界では、力は4つなのだと覚えておいてください。 では力とは一体何者なのでしょうか? 「あいつは力が強い」 「会長の力がまだ残っているので息子の専務ははずせない」 この場合どちらも力です。 力とはその物事を推し進める事象のことです。 例えば机の上の消しゴムを跳ね飛ばすと、跳ね飛ばした力の分だけ飛んでいく。 力を加えることで、静止したものが飛ばされる。 何となくですが力とは加える側と加えられる側とに分かれたイメージです。 素粒子の世界の力とは二つの物質に対する「相互作用」です。 相互作用とはお互いが影響を与えることで作用するという意味です。 磁石を例に上げると分かりやすいと思うのですが、磁石は互いの極同士が引き合います。 磁石のように分かりやすい力の均衡は別としても、物理学の世界での力は、常に相互関係が成り立ちます。 まだ想像しにくいな、という人は恋愛を思い浮かべてみてください。 お互いが惹かれあうから恋愛が始まるわけです。 一方的な愛情では、相手は離れていってしまうわけです。 さて力については四つあると書きましたが、四つではないかと思われるので、四つと書いていますが、将来科学が進めば変わっているかもしれません。 いい加減だなあと思うのかもしれませんが、科学の進歩でひょっとしたら別の力が見つかったり、今は違うと思っていた力が実は一緒だったと言う可能性も十分にありえるお話ではあります。 では四つの力ってなあに?と成ると思いますが、これは本編でもあったように、素粒子の世界のお話が関連しています。 われわれの体や、あらゆる自然界の物質は、全て素粒子が集まって生成されています。 素粒子の一つ一つはさまざまな特徴がありますが、その振る舞いには規則性があります。 その規則性が他とは異なる特性を持つものが全部で四つあるということなのです。 では四つの力とはどういうものがあるのか?

    ■重力:重力相互作用

    重力はご存知のようにニュートンが発見した万有引力の法則でその存在を知られるようになりました。 太陽の周りを地球が回り続けているのも、重力によるものです。 重力の相互作用とは、実はりんごが地面に向かって落ちる際に、りんごと地球とで引き合う力というものが存在します。 一方的に地球がりんごを引き寄せているのではないのですね。 しかし、実際はりんごの引き合う力が弱く、地球の重力に引っ張られるように落ちていくように見えるのです。

    ■電磁気力:電磁相互作用

    磁場から電荷が力を受ける相互作用で、電車なんかはこの力で動きます。 もともとは電気と磁力というものは別だと考えられていましたが、エールステッドの実験により、電流から磁気が生じ、ファラデーの電磁誘導の発見で磁場から電気が生成されることが発見されたことで、似た性質の力ではないかと言うことになり、後にマックスウェルがその方程式で、電気力と磁気力を理論的に統一しました。

    ■弱い力:弱い相互作用

    弱い力とは、うだつのあがらない親父のパンチとかではなく、中性子のベータ崩壊時に働く力です。 なんのこっちゃですが、この話の前提としては、原子核を理解する必要があります。 われわれの体や、全ての物質は原子と呼ばれる小さな単位の集合です。 その原子の中には「原子核」があって、電子がその周りをぐるぐるしている。 さらに原子核の中には「+の電荷を持つ陽子」「+も-もない中性子」で構成され、その数字は常に同じです。 要は陽子が2個あれば中性子も2個あります。 しかしここでふと思うのが陽子は+の電荷をもち中性子は中性なわけなので、電気的に安定しない(プラスとマイナスで均衡しない)のではないか?という疑問が起こります。 起こらなかったらすいません。 どこかにマイナスの電荷はないかと探すと、原子核の周りを回る「-の電荷を持つ電子」があるようなので、電子で均衡を保っているのではないかと考えたわけです。 しかしただでさえ狭い原子核に陽子が居続けることができるのは何故なのか? そもそも電子は原子核の外に居るわけなので、何故陽子は原子核から飛び出さないのだろうか? これについての答えとして用意されたのが、「中性子が-の電荷を持つ電子を持ってるんじゃないの?」という考え方でした。 正確には中性子というものはかなり不安定な物質で、ある一定時間を過ぎると、破裂してしまう。 そして破裂した際に作り上げるのが電子と反ニュートリノという物質でした。 反ニュートリノとはパウリという人が見つけた「電気的に中性で、極々小さい粒子」です。 この崩壊までのシナリオを「ベータ崩壊」と名づけられました。 ベータ崩壊を起こした中性子は陽子になってしまいます。そして電子と反ニュートリノを放出します。 このままでは原子核の中は陽子が2種類と電子とニュートリノになってしまい、原子核はわけが分からなくてなってしまいます。 そこで、この電子とニュートリノはひょっとしたら陽子とくっつくと、また中性子に戻るのではないか? そう考えると、原子核の中では、中性子と陽子が入れ替わりながら、電子と反ニュートリノを受け渡ししている状態になります。 なかなか面白い考え方ですよね。

    ■強い力:強い相互作用

    弱い力に対し、強い力とは、原子核を作る力です。 先の説明のように、原子核とは陽子や中性子などで構成され、ベータ崩壊によって生じる弱い力によって保たれているわけですが、しかし電子のキャッチボールだけで果たして陽子と中性子を結び付けて置けるのか? この疑問に答えを出したのが、日本人初のノーベル賞受賞者の湯川秀樹さんが考えた「中間子理論」というものでした。 この理論は、陽子と中性子を結びつける物質として中間子という未知の粒子を考え出すことで、電子の交換力だけで説明できない力を証明することになります。 考えてみれば、理論に合わないからって、「じゃあ、他のものがあればいいんでしょう」的な、トリッキーな推論ですが、実際にその存在が見つかたことで、「原子核に陽子と中性子が収まっている」理由として、中間子の交換による強い力の存在が証明されることになります。 ちなみにこの強い力を崩壊させる、つまりは中性子を核めがけて与えることで、核分裂を起こし、核全てに連鎖分裂を起こさせ、膨大なエネルギーを作り出すことができます。 これが原子力の原理です。

    ■力に拘わる科学の挑戦

    最初に書いたように、四つの力は将来は三つの力とか二つの力に変わっているかもしれません。 今後の科学の進歩いかんによって、それぞれの力は統一されるかもしれません。 思えば昔の科学では、地球の引力と、月や地球が別の天体の周りを回る力は別物とされてきました。 ニュートンが導き出した法則によって、重力にまつわる力が見事統一されたのです。 いつか四つの力の謎が全て解けて行くうちに、電磁気力と弱い力が統一されるかもしれませんし、ひょっとしたら四つの力が一つの力に統一されるかもしれません。 その時人類は、ひょっとしたら今とは違うステージ立っているのかもしれません。
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