ファーストフードやマーガリンは体に悪いのか?
トランス脂肪酸
(2015年06月15日更新)
- ちょっと前に「スーパー・サイズ・ミー」というドキュメンタリー映画が話題を呼んだ。 内容は、監督自身が1ヶ月ファーストフードを食べ続けるとどうなるのか?を実験したものなのだが、結果は皆さんの予想通り、体調を崩し太る。 太った理由の一つとして、毎日高カロリー食を取っていたことと、舞台となったファーストフードチェーンに使われている食用油に「トランス脂肪酸」が多く含まれるからだと当時言われた。 この脂肪酸の摂取は、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が増加し、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減少させる。 結果として動脈硬化のような血液の病気の促進も予想され、特に心機能の低下がリスクとして起こりえる。 映画の中では、ハンバーガーを食べ続ける苦痛も描かれており、見ていて気の毒になってしまうのだが、そもそも毎日多分成人男性の1日の摂取量を遥かに超えたカロリーを食し、且つ脂っこいファーストフードを食べ続ける企画自体が無謀なので、自業自得である。 映画を観ていても、監督が意図した「ファーストフードは危険だよ」のメッセージは届かず、「そりゃそうだわなあ」くらいの感想しか持てなかったが、この映画きっかけで、奇妙な食用油の存在を知ることができたので、今回はこの「トランス脂肪酸」について調べてみた。 まず「トランス脂肪酸」について目を引くのが、このトランス脂肪酸の別名が「食べるプラスチック」と呼ばれていることである。 トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の特徴である、炭素の二重結合に見られる、トランス型の分子構造のことを言うらしい。 少し要約すると、植物油などの生成時は、水素を添加して、不飽和脂肪酸の二重結合を減らし、二重結合の無い飽和脂肪酸を作り、油を硬くすると言う工程を踏む。 水素添加を行い飽和脂肪酸を作ると、分子構造が安定するので、解けにくい物質が作れ(融点が上がる)、油が酸化しにくくなるという効果が期待できるようだ。 例えばマーガリンなんかは常温で固形化する必要があるため、且つ長期使用するものなので、腐りにくく、常温固形化するこの油は大変重宝される。 この水素添加により、飽和脂肪酸のほかに、トランス脂肪酸も生成してしまう。 トランス脂肪酸が何故食べる「プラスチック」と呼ばれるのかは、分子を顕微鏡で見るとプラスチックにたいへん似ていて、多くの科学者たちが「オイルのプラスチック化」と呼んでいたことに由来している。 自分でも分子構造をWikiってみたが、プラスチックと比べて炭素数が全然違うなあ位で、似ているといえば似ている、似ていないといえば似ていない。 化学は苦手なのでよく分からない。 で、分からないことを書いても仕方が無いので、論拠を変えてみる。 そもそも腐りにくく、プラスチックに似ている食品を食べて良いのだろうか? そんな疑問が沸き起こってしまう。 実際に映画の中でも1ヶ月しても腐らないポテトが紹介されていて、当時ネットでも多くの人が腐らない検証をしていた。 その辺の真偽については良く分からないので、ネットで調べるなりして個々で感じていただければよいとは思うが、今回の問題定義は、何故そんな危険なものが売られ続けるのか?である。 まずは海外の話からすると、我が民族の友人であるアメリカ様はすでに規制がなされている。 米食品医薬品局(FDA)は、マーガリンなどの加工食品に含まれるトランス脂肪酸の規制に乗り出し、心臓病の原因になると指摘されており、「安全ではない」と判断している。 「安全ではない」論拠は、先に述べたように、トランス脂肪酸は心筋梗塞や狭心症のリスクを増加させ、肥満を発症させやすく、アレルギー疾患を増加させ、胎児の体重減少、流産、死産を生じさせる可能性があること、母乳を通じた乳児へのトランス脂肪酸の移行が研究等で確認されているからである。 こんな危険な物質が何故日本では規制されないかは、僕の解釈なので興味のある人は別で調べてもらいたいのだが、食品安全委員会というところの見解は、日本人は通常の食生活をしていれば、トランス脂肪酸による健康への影響は小さいから、規制措置は必要がないとの判断をしている。 規制措置も無いから表示義務もないので、われわれ消費者はどの製品に含まれているかは深い知識が必要となってしまうわけである。 また日本の消費者庁は何をやっとる、けしからんと言いたい所だが、ここまで書いていて、ふと大事な論点が抜けていることに気づく。 しかし、トランス脂肪酸がプラスティックってことは、サラダ油はプラスチックってこと? そして、トランス脂肪酸が含まれる食品が、数ヶ月放置しても腐らないなんてありえるのか? この質問については、同じトランス脂肪酸を含む食品であるマーガリンを例に出すと分かりやすい。 先に書いたように、マーガリンもこの食用油を大量に使っている。 しかし経験上、バターよりは腐りにくいとは思うが、数ヶ月常温で放置すれば腐る。 カビも生えてしまう。 では何故腐らないと思うのかは、多分バターとの比較の話だと考えられる。 バターは乳製品で牛の乳が原料だが、マーガリンは植物油が原料である。 簡単に言えばサラダ油と同じようなものなので(ちょっと乱暴)、バターよりは腐りにくいのは当たり前である。 推測するに、マーガリンとバターは良く似ているので、その比較に持ち出され、トランス脂肪酸が危険であると囁かれるようになって、じゃあマーガリンは腐らないのではないかというデマにつながったのだろう。 実際に実験を行ったという学者の後押しもあり、マーガリンは犠牲になってしまったのかもしれない。 分子構造が似ていたり、腐らないからマーガリンはプラスチックなのか?と言われればかなり乱暴な話しで、そもそものプラスチックの製造過程や、融点の違いを考えて見ても、異なるものであることはわかるだろう。 そもそもマーガリンを使うのをやめてしまっても、結局どの製品にトランス脂肪酸が入っているのか分からないので、いちいち気にしていたら食べるものがなくなってしまう。 規制は確かに大事で、食品表示を行い、消費者に選択の余地を与える必要性はあるとは思うのだが、とは言え数個の製品を取り立てて危険だという風潮もあまりよろしくない。 多分、トランス脂肪酸は危険なのだろう。 日本の役所が頼りないのも事実だろう。 結局人間が作った便利なものにはそれなりにリスクがあることを認識して、逆に加工品に頼り過ぎない、健康な食事を意識して生活していくことが重要ではないかと思う。
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