スプーン曲げは超能力か?

超能力の正体で、「種がある」のが手品、「種がない」のは詐欺

(2012年06月06日更新)

  • この前テレビで、世界的に有名な食器メーカーの作った、絶対に曲がらないスプーンを、スプーン曲げで有名なユリゲラーは曲げることができるのか?という実験(?)をやっていた。 アホちゃうんと思いながらも、何かのついでくらいにテレビを観ていたのに、面白くてつい最後まで観てしまった。 勿論スプーンは曲がらず、ユリ・ゲラーは結構早い段階(多分2・3時間位だったと思う)でギブアップしてしまった。 まあ、当たり前の話だが、これを当たり前と思っている人は意外と少ない。 スプーン曲げの原理は簡単で、ほとんどはそれ専用の手品グッズを買うか、器用に力任せに折り曲げるかなのだが、今では手も触れずに曲がったり、くるくると回ってネジ落ちたりと、工夫がすぎているようだ。 同じスプーン曲げでも、これだけ手が混んでくると、逆に本当に超能力があるのではないかと思ってしまう。 「誰もが自分自身の視野の限界を、世界の限界だと思い込んでいる」と言ったショーペンハウエルのように、人間の能力は本当に無限ではないかという錯覚を覚えるほど、手品の分野は日進月歩で凄い速さで進歩しているようだ。 しかし、所詮は手品で、その方法には必ず種がある。 「種がある」ことを知っているから手品は面白いのであって、「種がない」手品は眉に唾をつけてかからなければならない。 では超能力でスプーンを曲げると言うのはどういうことなのか。 ①超人的な力を授かり、指で触れただけで曲げることができる。 ②指先にスプーンを柔らかくするほどの熱量が発せられ、指で曲げられるようになる。 ③何らかの超人的な力で分子構造を変え、個体を柔かくすることで、スプーンが曲がる。 とまあ思いつくのはこれくらいだろうか? 検証するまでもないのだが、実際にこの現象がどういうことかを考えることにする。 まずは①であるが、よく言われる曲げ方のコツという説を無視して、単純に超人的な力で、通常の方法で曲げるとすると、ワンピースのルフィーのように、力を指の一箇所に貯めて放出できなければならない。 しかも、その力が金属を完全に潰してしまうわけなので、推測でも数トン程度の力が必要なのではないか。 そんな力があるなら、僕ならわざわざスプーンなんか曲げずに、デコピンで野球のボールなんかを大気圏ぐらいにまで飛ばすだろう。 スプーンであることに、なんらかの恣意的なものが働いていると思うのは当然というものである。 ②については、スプーンを構成するものがニッケルとクロム(メッキ)で出来ており、これら金属は、1000度以上の融点を持っている。 当然ながら炭素で出来た人間は丸焦げで、金属を折る前に自分が燃えてなくなっているかもしれない。 ③に関しては分子配列を変えて、金属の結合面を他のものに変えるということだが、そんなことが出来るのならば、自分の指の物質としての分子の配列はどうなるのか聞きたくなる。 というかもはや③に至っては訳が分からない。 ここで結論であるが、スプーン曲げの正体は、無論超能力ではない。 大半の人が考えるように、人間の力とトリックで構成されている。 このトリックは、古くからの手品の手法として既にあったらしく、ユリ・ゲラーが世界的に広め、その知名度故にバリエーションも増えてきているが、突き詰めれば必ずどちらかの方法に当てはまる。 ネットでもその方法が山のようにあるので、時間のある方はそちらで種明かしをご覧いただければと思う。 どのジャンルでもそうなのだが、一見ありそうな感じのものも、よくよく順を立てて考えていくと、矛盾点が沢山或ことに気づく。 しかし、目の前で見せられたり、巧妙なものになると、順序立てて考えることも奪われ、むやみに信じてしまいがちである。 そんな時に必ず考えて欲しいのは、「種があるものは手品」「種がないものは詐欺」であるということを考えることで、ある程度悪意のあるモノは避けられるのではないだろうか。
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